2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けて、宿泊施設の客室数が話題になっておりましたが、同様にインバウンド対策や災害対策の必要性も話題となっております。
2018年は6月に、大阪北部地震と大雨により近畿一円でも大きな被害が発生してしまうなど、想定外の規模の災害が続いています。訪日外国人の方は初めて地震を体験される方も多く、「情報が足りない」「不安である」という報道をたくさん耳にしました。
報道にもありましたように、まだまだ対策が不十分だということで、これから全国的に災害対策について考え直す機会が増えるのではないかと考えて、各省庁などの対策状況や支援情報などを調査しました。
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報道で訪日観光客への情報不足は話題にもなりましたが、株式会社サーベイリサーチセンターは「大阪北部地震における訪日外国人旅行者の避難行動に関する調査」を行っています。
調査では、南海電鉄の関西空港駅で以下10項目を、外国語の話せる調査員による質問紙を用いた面接で聞き取りをしています。
地震がおさまった後の情報収集では、「テレビやラジオ」「インターネット」「SNS」等を通じて情報収集や安否確認を行っています。
しかし【地震発生時に希望する対応】の回答では、「スマートフォン等で災害・交通・避難情報の提供を多言語でして欲しい」(52.0%)、「母国語のマニュアルを配布してほしい」(48.7%)、「避難誘導などわかる言語でしてほしい」(40.1%)、「テレビ等でも英語等で表示してほしい」(28.3%)、「母国語等での案内サインを設置してほしい」(25.7%)となっており、欲しい情報が取得できていないことがわかります。
また【宿泊施設での「避難指示の誘導」の有無と「理解」】では、全体の約6割が避難誘導が無かったと回答しており、全体の約75%が「避難しなかった」と回答しています。
東日本大震災のように、地震だけではなく津波が起きた場合や、地震後の火災が発生した場合などを考えると、その場所で必要な情報を多言語で提供する必要性があります。また訪日観光客も望んでいます。
今年の3月に総務省消防庁から、「外国人来訪者や障害者等が利用する施設における災害情報の伝達及び避難誘導に関するガイドライン」が公表されています。
ガイドラインは、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けての内容となっており、対象は「駅・空港」「競技場」「宿泊施設(ホテル・旅館等)」です。
主な内容として、以下の3つを「施設において取り組むことが望ましい事項」としています。
- デジタルサイネージやスマートフォンアプリ、フリップボード等の活用などによる災害情報や避難誘導に関する情報の多言語化・文字等による視覚化
- 障がいなど施設利用者の様々な特性に応じた避難誘導(避難の際のサポート等)
- 外国人来訪者や障がい者等に配慮した避難誘導等に関する従業員等への教育・訓練の実施
ガイドラインは、テキスト中心の行政文章になっておりますが、理解しやすいように【「外国人来訪者や障害者等が利用する施設における災害情報の伝達及び避難誘導のあり方等に関するガイドライン」の手引き】としても公開されています。
出典:総務省消防庁
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けて「宿泊施設(ホテル・旅館等)」でも、訪日観光客を含めた様々な特性に応じた対応が求められるようになってきます。
観光庁では、平成27年度から継続して募集している「宿泊施設のインバウンド対応支援事業」の公募がスタートしました。本年度で5回目となります。
平成27年度は167団体のうち、157団体。平成28年度は98団体のうち、95団体。平成29年度は16団体が認定され、約2,000の宿泊事業者を支援しています。
支援対象は、ソフト面からの受入環境整備を通じた訪問時・滞在時の利便性向上を図ることを目的に、地域の宿泊事業者が実施するインバウンド対応事業となっております
平成30年度予算 訪日外国人旅行者受入環境整備 緊急対策事業費補助金 「宿泊施設インバウンド対応支援事業」 【公募要領】に、詳しい情報が掲載されていますが、以下にまとめました。
- (1)館内共用部のWi-Fi整備※1
- (2)館内共用部のトイレの洋式化
- (3)自社サイトの多言語化(宿泊予約の機能を有するサイトに限る。)
- (4)館内共用部のテレビの国際放送設備の整備
- (5)館内共用部の案内表示の多言語化
- (6)館内共用部の段差解消
- (7)オペレーターによる24時間対応可能な翻訳システムの導入又は業務効率化のためのタブレット端末の整備
- (8)クレジットカード決済端末の整備
- (9)ムスリムの受入のためのマニュアルの作成
- (10)その他宿泊施設の稼働率及び訪日外国人の宿泊者数を向上させるために必要であると大臣が認めた事業(宿泊事業者等団体の運営費、宿泊事業者の人件費など経常的経費は補助対象外)
【参考】過去に認められた補助対象事業
- パスポートリーダー導入
- 多言語表示のためのデジタルサイネージ導入
- シャワールーム設置
- (1)宿泊事業者等団体
複数の宿泊事業者やその他関係する事業者等により構成される団体- (2)構成員宿泊事業者
宿泊事業者等団体の構成員である宿泊事業者※単独での申請不可。必ず5以上の宿泊事業者が共同して上記(1)の団体を構成し、申請。
補助率:3分の1(上限100万円)
補助金の額:補助対象経費に補助率を乗じて得た額以内。
平成30年6月27日(水曜日) ~ 8月10日(金曜日) 【観光庁必着】 第1次締切 9月中旬計画認定予定
~ 9月28日(金曜日) 【観光庁必着】 最終締切 10月下旬計画認定予定
東京都内に限られてしまいますが、東京観光財団でも観光庁同様にインバウンド対策の支援補助金があります。
- 多言語対応(施設・店舗の案内表示・室内・店内設備の利用案内・ホームページ・パンフレット等の多言語化、多言語対応タブレット導入等)
- 無線LAN環境の整備
- トイレの洋式化
- クレジットカードや電子マネー等の決済機器の導入
- 客室の和洋室化、テレビの国際放送設備の整備(宿泊施設のみ)
- 免税手続きに係るシステム機器の導入(免税店のみ)
- 外国人旅行者の受入対応に係る人材育成
- 〇都内の民間宿泊施設
- 〇都内の飲食店(※)・免税店(中小企業者のみ)
- 〇外国人旅行者の受入対応に取り組む中小企業団体・グループ
(※東京都が実施する「EAT東京」(多言語メニュー作成支援ウェブサイト)の「外国語メニューがある飲食店検索サイト」に掲載されている店舗)
補助対象経費の2分の1以内
- 〇宿泊施設・飲食店・免税店向け
1施設/店舗あたり300万円を限度- 〇団体・グループ向け
共同で実施する多言語化・人材育成について、1団体/グループあたり500万円を限度
平成30年4月2日(月曜日)から平成31年3月29日(金曜日)まで
「QR Translator」では、これまで全国70以上の自治体で観光案内を中心に外国人対応のお手伝いなどをさせていただきました。
また総務省消防庁のガイドライン策定では、検討する部会に関連した実証実験となる避難訓練業務を受託し、外国人向け・障がい者向けの避難訓練も昨年だけで6回実施させていただき、知見を高めてまいりました。
これまでQR Translatorを通じてインバウンド対応を行ってきた経験と、避難訓練の知見をベースとして、昨年度、東京都中小企業振興公社より先進的防災技術実用化支援事業に採択いただき、災害対応部分のシステム開発を行いました。ハード設備(受信機等)なしで、JアラートやLアラートと連動した仕組みとなっていますので、位置情報に合わせた災害情報を提供することが可能となります。
いつ起こるかわからない災害のためだけに準備をしておくのではなく、平常時にも利用できるようにすることで周知やインバウンド対策にもなります。
「QR Translator」は簡単に翻訳・音声読上げに対応したWEBページが作成できるプラットフォームサービスとなっており、平常時は観光情報や商品情報など訪日観光客が必要な情報を表示することができ、災害発生時には避難・支援に必要な多言語コンテンツを発信することが可能です。
各言語ごとのマニュアルを作成するのは、手間もコストも掛かる上に、観光客が持ち運ぶには不便ですが、名刺サイズのカードにすることで簡単に持ち運びができて、必要な情報に母国語でアクセスできるようになります。
大阪北部地震の際には、 少しでも役立てばということで、二次災害に備えて発生翌日に災害啓発の簡易ツールを無料公開させていただいておりました。
日本語のほか、英語・中国語簡体字・中国語繁体字・韓国語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・スペイン語・ポルトガル語・ロシア語・ベトナム語・タイ語・インドネシア語・マレー語の15言語で地震に備えるための情報提供を行い、できる限り早く情報を届けられるようにいたしました。
https://qrtranslator.com/0000006202/000001/
上記、QRTコードからもアクセスできますので、お試しください。
事前にこういった情報を準備しておくことで、災害時に訪日観光客へ必要な情報を届けることが可能になります。
入り口としているQRコードは、専用アプリ不要で読み込むことができ、QRコード決済をはじめ、世界でも普及しています。
また導入ハードルの高いハード設備の対応ではなく、QRコードの設置対応をするだけなので、導入コストを抑えながらインバウント対策・災害(防災)対策をすることが可能です。
災害時には、避難所の開設やコールセンターの設置が急遽行われたりされますが、その情報があることを知らせる方法がわかりやすい必要があります。
「QR Translator」は、QRTコードを変更しなくてもアクセスしたコンテンツは簡単に情報更新ができるうえに、開発した災害時用のシステムで位置情報に合わせた災害情報を、自動的に多言語で提供することも可能となります。
今年はすでにこれだけたくさんの災害が連続で発生しましたので、これまで以上に多くの企業が災害対策を見直す年になると思います。
次の災害に備えて対策をお考えになる際には、ぜひお問い合わせください。